2014年公開のジブリ映画『思い出のマーニー』。
(映画)思い出のマーニー(2014)米林宏昌 監督
— kotorisuki (@musicpaperback) June 27, 2020
舞台を北海道に移し、原作のキャラクター設定、ストーリーをほぼそのまま生かしながら、すっきりとまとめています。
思春期の杏奈の内面をうかがわせる表情の繊細な描写や、マーニーの謎が解明される演出も見事。
じっくり心に染み入る感動作です。 pic.twitter.com/XWgEnGAUQi
監督を務めた米林宏昌監督は、『借りぐらしのアリエッティ』も手掛けています。『思い出のマーニー』の原作は、イギリスのジョーン・ロビンソンによる児童文学。
借りぐらしのアリエッティ|きになるその後をいろいろ考察してみた
原作ではイギリスが舞台でしたが、『思い出のマーニー』の制作にあたって、日本の北海道釧路地方に変更。静かな時が流れる美しい北海道の風景も、『思い出のマーニー』の魅力のひとつです。
https://twitter.com/b0iqqlqwkdj8q7t/status/1246076156014542852?s=21
『思い出のマーニー』は、主人公の少女・杏奈が、喘息療養のため札幌から空気の良い田舎町に行き、そこで出会った不思議な少女・マーニーとのひと夏の不思議な交流が描かれています。
【思い出のマーニー 】
— オススメ超名作映画! (@introduceM) October 31, 2020
心を閉ざした少女アンナは喘息を患い。
療養のため海辺の町で過ごすことになる、そこで古い屋敷を見つけると娘マーニーと親友になった。
毎日遊ぶことになるが、町の人は誰もマーニーの事を知らない…。 pic.twitter.com/eZVLA2nZre
今まで観てきたジブリ映画の主人公達は、明るく前向きな女の子が多かった印象。しかし『思い出のマーニー』の杏奈は、無表情で暗いイメージが持たれているためか、いつものジブリ映画とは少し雰囲気が異なる作品になっています。
出典: Studio Ghibli
特に杏奈については、「クズ」「性格悪い」「精神病」などと言われ、公開当初から好き嫌いが分かれているようです。
では一体杏奈はなぜ、「クズ」「性格悪い」「精神病」と思われてしまうのか、考察していきたいと思います。
目次
杏奈はクズ?辛い過去からくる被害妄想がひどい
「私は…私が嫌い…。」
https://twitter.com/ghibli_iq/status/1300216321414541312?s=21
『思い出のマーニー』が始まってすぐ、杏奈はこのように話します。かなりネガティブな発言。これからどんな物語が始まるのかな…と思ってしまいますね。子供が観たらビックリしちゃうかも。
『思い出のマーニー』の杏奈には幼い頃、生みの親(両親)が事故で他界するという辛い過去があります。
その際、杏奈を引き取るのが面倒という親戚の対応を見たことにより、トラウマなってしまいます。その事で杏奈は“自分はいらない子なんだ”と思うようになり、被害妄想を抱くようになっていきます。杏奈は常に自分は不幸だと思い込んでいるのです。
更にお世話をしてくれた祖母も体調を崩して亡くなってしまい、その後杏奈は養子に出されることになります。
肉親を早くに失ったが優しい里親に巡り合えた杏奈と両親ともに健在だったがほったらかされて育ったマーニー。#金曜ロードショー#金ロー#思い出のマーニー pic.twitter.com/wp4r48150x
— 米子@3期視聴中 (@maikakokikako) April 3, 2020
杏奈を養子として引き取ったおばさん(頼子)は、実の母のようにとても温かく杏奈に接しています。
この頼子おばちゃんのビジュアルでは松嶋菜々子の声を受け止めきれていない感がいつも気になる#思い出のマーニー pic.twitter.com/Gtx2jf5zdY
— すする (@hirahira0401) April 3, 2020
しかし杏奈は心優しい頼子を「おかあさん」とは呼ばず、「おばさん」と呼んでいます。
育ての親であるのに、心の距離を感じますね…。
それには理由があり、ある日杏奈は頼子が自治体から養育費として、補助金をもらっていることを知ってしまったからです。幼い頃は笑顔も見られた杏奈。
https://twitter.com/kinro_ntv/status/885833250890842115?s=21
それ以来杏奈は頼子に対し、自分への愛情が本物ではないのかも…と不信感を持つようになり、心を閉ざしてしまったのです。
周囲の人たちに対して暴言を吐く杏奈
『思い出のマーニー』では杏奈の暴言を吐くシーンが所々見られます。
杏奈が北海道行の列車の中で、心配症の頼子の事を思いながら、「メェメェうるさいヤギみたい」と暴言を吐いています。
療養先である大岩夫妻の家に着いた時も「他人の家の匂いがする」と吐き捨てるように呟きます。
清正の妻・大岩セツは、おおらかな性格で心配性の頼子とは対照的な性格。初期設定では60歳です。
— ジブリのせかい【非公式ファンサイト】 (@ghibli_world) April 3, 2020
声優は、根岸季衣さん。『魔女の宅急便』のあとに、ジブリ作品に出演したいと時間談判したことがあるそうですが、それから数十年の時を経て、願いがかなったそうです。#思い出のマーニー pic.twitter.com/8VieCIyIsv
夏祭りに行く際、娘さんの浴衣を探してくれる大岩のおばちゃんに対しても、「似合うわけないじゃん、おせっかい」と呟いています。
#思い出のマーニー
— 藍 (新潟弁モード) (@mizun0g0t0shi) August 28, 2019
【服装②杏奈】
杏奈が正反対の淡いピンク色を着ているシーンが2つある。他の服装とイメージが大きく異なるので、印象的。
ひとつは村のお祭りに行くときの浴衣、もうひとつは役所からの補助金の通知を見てしまうときのセーター。
共通点は「今の杏奈が選んだものではない」こと。 pic.twitter.com/KYZgYWwsR6
そして『思い出のマーニー』の中で最も衝撃を受けたのは、近所に住む信子とのシーンではないでしょうか。
信子は杏奈より一つ年上のポッチャリとした女の子。
ふとっちょな女の子は信子。杏奈の一つ年上で、13歳です。
— ジブリのせかい【非公式ファンサイト】 (@ghibli_world) April 3, 2020
頼経明子さんが声優を担当しています。#思い出のマーニー pic.twitter.com/SKqRaQRi3W
杏奈と一緒に夏祭りに行った信子は、ふと杏奈の目が青いことに気付き、「目が青くて綺麗」と褒めました。しかし目が青いことにコンプレックスを抱いていた杏奈は、この信子の発言に対しカッとなり、なんと信子に対し「太っちょ豚!」と傷つけるような発言をしてしまいます。
これには周りもビックリ!
しかしその時すぐに信子は大人の対応をし、杏奈を許します。杏奈はジブリファンから「クズ」「性格が悪すぎる」と言われることに…。
札幌とかいう大都会から来た女子に
— どんぺりしゃぶるぼーい@頼光宝具5達成 (@mtn4434) October 9, 2015
「太っちょ豚」
なんて暴言吐かれて、怒らず相手の悪い所を指摘して場を収める信子ちゃん一歳年上とはいえ大人すぎるんだよなあ・・・ #思い出のマーニー pic.twitter.com/yAGbCuxyqL
後に杏奈は信子に対し、「太っちょ豚」といったことを謝罪しています。
思い出のマーニーの杏奈が「精神病」という都市伝説
『思い出のマーニー』では杏奈の言動から、「精神病なのでは?」という都市伝説まで出ています。
特に精神疾患の中でも、統合失調症の症状に似ているのではないかと噂されているようです。
統合失調症は、幻覚や妄想といった精神病症状や意欲・自発性の低下などの機能低下、認知機能低下などを主症状とする精神疾患です。
(メディカルノートより)
個人的に映画版で周りと打ち解けられない杏奈にはモロ感情移入してしまっていて「私は私のとおり。 不機嫌で、不愉快で。 私は、私が嫌い……」と泣き崩れるシーンが劇中最も胸に来た。そっからマーニーに出会うのがまたイイ!#思い出のマーニー pic.twitter.com/Od3z1WvzAh
— ナベ (@nabe4242) September 9, 2014
杏奈の言動を見てみると、次のようなものが挙げられます。
- 人との接し方が苦手
- 極度の人見知りで周りにうまく馴染めない
- 心を閉ざしている
- 自己否定が激しい
- 自分の事が嫌い
- 突然暴言を吐く
- 幻覚や妄想が激しい
特にこの杏奈の幻想、幻覚が統合失調症に当てはまるかわかりませんが、「マーニー」は杏奈自身の記憶が生み出した空想の中の女の子で、確かにリアリティがありました。
出典: Studio Ghibli
そして後に明らかになりますが、杏奈が作り出した「マーニー」こそが、幼い杏奈を育ててくれたおばあちゃんだったのです。
杏奈がつけている髪留めは、祖母のマーニーから譲ってもらったものでした。#思い出のマーニー pic.twitter.com/eaO6gTLQCL
— ジブリのせかい【非公式ファンサイト】 (@ghibli_world) April 3, 2020
どんなに暗く辛い過去があっても、養母も周囲の人々も杏奈に温かく接していて、側からみると恵まれた環境だと思えます。
マーニーも杏奈に「あなたが羨ましい」と話すシーンがあります。それなのに杏奈は、常に否定的な考え方をしています。
そこが杏奈は「クズ」などと思われてしまうところなのかもしれませんね。明るく前向きに頑張っている主人公であれば、「クズ」とは思われなかったかも?
このように『思い出のマーニー』の杏奈の言動だけを切り取ってみてみると、確かに「クズ」で「性格悪い」「精神病」と思われてしまうのもわかります。しかし実際には幼い頃の辛い記憶が、心を閉ざしてしまう原因だったということじゃないでしょうか。
https://twitter.com/superjk_sayaka/status/1246088572546899968?s=21
ただ暗くて性格が悪いわけではない、統合失調症などの精神病ではないと私は思います。
辛い過去がトラウマとなり、なかなかうまく他人と関われないのでしょうね。
『思い出のマーニー』の終盤は杏奈にも少しずつ変化が出てくる!
『思い出のマーニー』の終盤になると、杏奈はマーニーをはじめ、様々な人との出会いを通じて、自分自身のことや本当の家族のことを知っていくことになります。少しずつ表情も明るくなり、他人にも心を開いていく姿が描かれています。
思い出のマーニー。自分が大嫌いと塞ぎ込んでた杏奈が自身の一部でもあるマーニーに「許してあげる。あなたが好き」と言えた事で、やっと自己の殻の呪縛から解放されるシーンに涙。今まで荒れていた入江に光が差し込み、窓際から笑顔を返すマーニー。過去を受け入れ前を向こうとする杏奈の心情が伝わる pic.twitter.com/Pxh5U9qUWt
— reOPE (@complex_face) April 3, 2020
頼子は杏奈に、自治体から養育費をもらっていたことを、罪悪感や傷つけたくないという思いから黙っていた事を打ち明けます。
米林監督は本作で、杏奈が他者と触れ合うシーンを意識的に作っていったそうです。
— ジブリのせかい【非公式ファンサイト】 (@ghibli_world) April 3, 2020
最初の札幌駅のシーンでは、頼子が杏奈に触れても微動だにしていなかったけれど、最後は頼子と親子の抱擁をするまでになりました。
他者との触れ合いに、杏奈の心の距離が反映されています。#思い出のマーニー pic.twitter.com/pKRpCivDFw
その後杏奈は育ての母・頼子のことも、しっかりと自分の母と言えるようになりました。真実を知って、不信感がなくなった瞬間でしたね。
『思い出のマーニー』
— MacoMaco (@ma_coda) April 3, 2020
杏奈に「母です」と紹介されたおばちゃんが、おじぎした後さりげなく涙を拭う演出に涙腺崩壊 pic.twitter.com/tWmLQk2EZs
そして空の色にも注目。ジブリといえば青空が浮かびますが、『思い出のマーニー』は雲が多い。杏奈の心をそのまま表しているそうです。後半は青空が広がっていますね。
「#思い出のマーニー」では杏奈の心情を天気でも表現しています。空の様子に着目して見るのも楽しみ方の1つです。 pic.twitter.com/HEZtsJ2yNn
— キャッスル@ジブリフリーク (@castle_gtm) April 3, 2020
心を空模様で表現しているところも素敵。また『思い出のマーニー』を違う角度からも楽しめますね。
まとめ
『思い出のマーニー』の杏奈は表情が暗く、目もうつろで被害妄想や自己否定感が強いため、「クズ」「精神病」ではないかとさえ言われています。
しかし杏奈は辛い過去がトラウマとなり、心を閉ざしているので、ただ「クズ」で性格が悪いわけではないと思います。精神病とも考えにくいでしょう。
確かに『思い出のマーニー』を見始めた時は、杏奈のひどい言動が気になりましたが、いつの間にか杏奈の複雑な気持ちを理解できるようになっていました。人間の繊細な心の動きや表情が、丁寧に表現されていると思います。
物語の後半になると、マーニー達との出会いによって、杏奈の表情も徐々に明るく豊かに変化していく姿が描かれています。
『思い出のマーニー』は、見る度にまるで違う映画を見ているような、毎回気づきがある作品だなと思いました。
思い出のマーニー|謎多き人物といち(十一)は何者なのか探ってみた
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